森のベンチ

朝摘みの野葡萄をいっぱいに詰め込んだ

蔦で編んだバスケットケースを抱えて、私の膝で一休み。


日焼けしたあの人はホワイトリーフの匂いがしたわ。


機嫌がいい日は私の肩に疲れた腕を回し、

遠い昔に恋したパレリーナの話をしてくれた。


あの人の手はとても奇麗だった。


今ではもう、あの人が早い夏を連れて来ることもないけど

私の膝に腰掛けて、優しく肩を抱いてくれた

想い出だけは決して忘れない。


もうすぐフィオニナの木々を渡る南風が、

あの人の匂いを連れて来る。

世界で二番目に気持ちいい場所。

エルドーラの丘には
世界で二番目に気持ちいい場所があるんだ

それは、七色の風がそよぐマナの樹の木陰

なかでもオレンジの風は
谷に咲くパラモアの花の香りを運んで来てくれるから
いつも眠くなっちゃうんだ

この前、マナの木陰で眠ってると
時を告げる手乗りウサギがピョンピョンやってきて
ぼくの耳元でこう囁くんだ

ねぇ、モリス、そんなところで寝てると危ないったら
地球は丸いから落っこちちゃうよ
ママのいる一番気持ちいい場所へお帰り

手乗りウサギの甲高い声で目を覚ますと、
ちょうど太陽がフェアリーの海の中に
ゴロンゴロンと転がり落ちていくのが見えた